「お帰りなさ~い」
「あぁ。・・・いいのか? こんな遅い時間まで」
「えー・・・と。泊まってっちゃダメ? ですか?」
「・・・かまわないぞ」
「笑わないでよぅ」
「ゴメン。ちなみに、な」
「はい?」
「何もなければ、明日は非番なんだ」
「マジで!?」
「何も起こらなければ、な」
「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・お願いがあるんです」
「何だ。急にそんな、思い詰めたみたいな顔して」
「結構、思い詰めてます」
「だから、どうしたんだ」
「実は」
「うん」
「俺、オトコなんですよね」
「────ぁあ?」
「心身ともに健全な男子なんですよね」
「・・・まぁ、見れば大体わかるが」
「明日、非番なんですよね?」
「何もなければ、な」
「お願いが」
「回りくどいな」
「抱かれてほしいんですよね」
「・・・・・・・・・・・・は?」
「だから、抱かれてくれませんか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで」
「だから、俺、オトコなんですってば」
「・・・・・・」
「一条さん、前、言ってくれましたよね、抱かれてくれるって。春頃だったかな?」
「・・・そうだったか?」
「そうなんですっ!・・・・・・今まで一条さんの負担になっちゃいけないと思ってずーーーっと言い出せなかったんですけど! でも、ここんとこ未確認も出てこないし、一条さん結構毎日ちゃんと帰ってこれてるみたいだし、明日非番だっていうし」
「・・・・・・だからといって急に」
「でも、どーしてもって言ったらオーケーするって言ってくれましたよね」
「そんなこと、あったか」
「あったんですッ!・・・あっ、何、誤魔化そうとしてるワケ!? 男に二言はないってのが持論でしょ!?」
「俺の持論は“中途半端はしない”だ」
「じゃあ、中途半端せずに抱かれて下さい」
「中途半端に抱かれたら、マズイだろう」
「ワケわかんないこと言ってケムに巻こうとしてるでしょ! 言ったじゃないですか、どーしてもって言ったら────」
「どーしても、なんて言ってないじゃないか、お前」
「いちじょおさんッ!」
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彼らの攻防戦は、その夜、いつ果てるともなく続いた。
(2004.05.15)