小学校3年生ぐらいの頃だった。
その日は母も祖母も留守にしていて、父と子供二人で留守番していた。
さて、昼食時を迎え、育ち盛り、食い盛りの子供たちは空腹を訴える。
父は困った。
父は普段、料理をしない。
今ならコンビニに走ればいくらでも弁当を買えるが、当時はそんな便利なものはない時代だ。
父が作ったのはカレーライスだった。何の変哲もない、バーモントカレーだ。
肉がなかったのか、代わりに細切りにした油揚げが入っていた。
後年、弟と二人でよく語り合った。「あの油揚げカレーは美味しかったね」と……。
思えば、父が作ってくれたという非日常感も美味しさを増してくれていたのかもしれない。
インスタントな食事でも、レトルトでも、大切な食の思い出。